自分が感じた問題が周囲を動かしていく
SDGsは2015年にまとめられた比較的新しいものですが、SDGsにまとめられたそれぞれのゴールに関する取組は、もっと前から継続して行われてきたものです。
今回は、能代市でごみの分別や循環について長年取り組みを続けておられる、高橋陽子さんからお話を聞きました。
活動のきっかけ
高橋さんがごみに関する問題に興味を持ち始めたのは約40年前。1973年に全国に消費生活センターが設置され、その時に消費生活モニターとして地域の女性20人が集まったそうです。その集まりの中で家庭に関わるいろんな話をするうちに、資源ごみの回収ができないかとか、ごみに関わる様々な問題があることに気づきました。そこで、集まった人たちでごみに関する問題を調べ始めたのがきっかけということでした。
高橋さんが活動を進めていく中で、ごみの量を減らそうという目的で、平成5年に能代市で「ごみダイエットプラン」が策定されます。策定過程の中で、高橋さんはコンポスト容器に対する助成制度を提案し、採用されます。
コンポスト容器とは、農家の人であれば分かると思いますが、バケツを逆さまにしたような形で蓋が付いており、中に生ごみを入れると微生物の働きでごみを分解して最終的には堆肥ができるというものです。
しかし、助成制度の運用がされていく中で、コンポスト容器を使ってみた人から、虫が来るとか、臭いがきつい、などといった苦情が寄せられることが出てきました。高橋さんは制度の提案者として責任を感じていたそうです。
そういった中、平成17年に「循環型社会形成のための市民懇談会」が開催され、これを契機にコンポスト容器の使用実態調査が行われます。この結果を基に、高橋さんが代表となり、コンポスト容器の使い方の研究を行う「コンポスト見なおし隊」が結成されることになります。隊員を募集したところ50人ほどの人が集まったそうです。
活動の現状
「コンポスト見なおし隊」の活動では、民間企業の方や大学の先生などにもアドバイスをして貰い、最終的に行き着いたのが「通気と水分調整を如何にするか」ということでした。こういった取り組みが地元紙などで紹介されることで、さらに興味を持った人が集まり、「コンポスト見なおし隊」では、コンポスト容器の適切な使用法を住民に周知する講座なども行いました。お話を聞くと、段ボール箱を使った簡易的なコンポストも作れるとのこと。野菜だけでなく、ガーデニングにも使えるとのことで面白そうです。生ごみが微生物の力で分解される過程を通じて、自然が循環していることや絶妙なバランスで成り立っていることを身近に感じられることもコンポストの魅力、と高橋さんは語ります。
また、高橋さんは、イベント会場でのごみの分別ということにも力を入れており、「ごみナビボランティア」というものもやっておられるそうで、「エコステーション」というものがあるとお話をいただきました。「エコステーション」とは、会場に分別の看板を示したごみ箱を置くとともに、ボランティアが分別を促す声かけをする、という形のイベント会場でのごみ回収所のことをいうそうです。効率的にかつ綺麗にごみの分別ができるそうで、「のしろみなと祭り」でも導入されてきたとのことでした。
今後の取組
「コンポスト見なおし隊」自体は「コンポスト容器の使い方を見出す」という当初の目的が達成できたため、現在は解散となっていますが、使用法の普及に関しては、現在も能代市の委託事業や畠町新拠点での講座などで継続して行っていくとのこと。農家の方をお呼びして、コンポスト容器でできた堆肥を使用した作物の育成講座、というアイデアも話されていました。
地域のみなさんへのメッセージ
高橋さんは、高齢化などもあり、やる人は少なくなっていくと思うが、やりたい人がいたらこれからも一緒に上記のような取り組みは続けていきたい、とおっしゃっていました。
SDGsという言葉ができる前からも、SDGsに関する取組を継続して行ってきた方々がいます。SDGsという言葉は特別なもののように見えますが、実際は日々の生活の中でちょっとやってみよう、ちょっと変えてみようと思えば誰でも取り組めるものなんだということが、今回様々な人のお話を聞く中で筆者が思ったことです。皆様もちょっとした取り組み、始めてみませんか?
コンポスト見直し隊 高橋陽子さん