コラム

“えふりこき”にならず周りをもっと頼ろう

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“えふりこき”にならず周りをもっと頼ろう

 柿木崇誌(かきのき たかし)さんは「畑がない農家」で、地域や空き家で放置されている柿を収穫して有効活用する事業に取り組んでいます。
 今回は、柿木さんが活動されている、地域や空き家で放置されている柿を収穫して、ドライフルーツなどに商品化する事業について話を伺いました。

現在の取り組みを始めたきっかけ

能代に移住して放置されている柿がすごく気になって、何かできないかと友人と話していたところ、ドライフルーツにして販売したらとアドバイスがあって、2022年の秋、地域に放置されている柿を収穫して加工販売する事業を始めました。私の名前「柿木」も柿に注目したきっかけです。

最初は無理だと思っていましたが、楽しそうだし、誰もやっていないことに取り組みました。それから半年も経っていませんが、収穫から加工・販売、メディア露出、商品開発、クラウドファンディング、キッチンカーとノンストップで現在までつながっています。

田舎のイメージは閉鎖的で足の引っ張り合いがあると聞いていたけれど、秋田全体がとても優しい人ばかりで、能代市で声をかけてサポートしてくれる人に沢山出会えました。そのおかげで柿ソースの開発につながりました。広島県出身だからお好み焼きに使える柿ソースの開発、ソースが出来たらキッチンカーでお好み焼き販売、商工会からは柿単体でビジネスになるとアドバイスいただきました。

柿を収穫したくても出来ないし、収穫しないとクマなど害獣が山から下りてきて荒らされる。そこに私が柿を収穫して有効活用することでお互い助かっています。

柿の木を切ってとお願いされることもあります。柿の木を残しておいて、私が収穫できる間はとお願いして伐採しないで済んだ例もありました。

空き家が増えて放置柿が増加しているのに柿の収穫量が落ちている、様々な問題があって相手にも、私にもプラスで対等な関係で取り組んでいます。

収穫した柿はドライフルーツや柿ソース、現在は柿の実でビールやワイン、剥いた皮で犬専用ふりかけの開発など、様々なジャンルへ挑戦しています。

昔から柿は柿渋を防腐剤にして雪囲いに塗っていました。今は国産の防腐剤が高いので、これにも使えたらなと思います。柿は汎用性が高く、糖分を取ったり保存食に使われていて、昔は価値も知恵もあったけど今は要らなくなった。柿がいろんなことに使えて、収穫する柿が無くなって私の仕事が無くなるのが一つの目標です。それはそれで悲しいんですけど。

取り組みでの苦労

ビジネスとして成り立たないとわかっているので、活動費が枯渇する勢いです。朝6時から皮むき、昼から収穫、空いた時間でPRしたり打ち合わせと一人で活動しているので、本当に時間が足りないです。いろんな人のサポートとアドバイスのおかげでここまで出来ています。

この半年、家族は我慢してサポートしてくれている、本当に感謝でいっぱいです。

白神山地を意識して活動されていますか

最初は白神山地のネームバリューで藤里町で収穫した柿に限って取り組もうと思いましたが、実際は収穫量が見込めなかった。

白神山地は意識してませんが、加工商品を海外向けの販売を検討しているので、ブランドを白神の柿にするかもしれないし、白神山地と一緒にアピールしたいです。

取り組んでいることが白神山地の保全に繋がる、それでいいと思っています。

ご自身や地域の皆さんの考え方の変化

取り組みに気になった人から連絡をいただいて、そこで人との付き合いが広がるのは大きいと思います。

柿に注目することで空き家の所有者や管理者がわかるなどつながりが深くなります。孤独化を防ぐことも大きなテーマです。一人暮らしの方が結構多いので、柿の収穫に行くといろいろ話をしてくれてコミュニケーションが出来て、収穫後に休んでお茶飲んで話しできるのも良い時間でした。

収穫だけでなく、柿の葉取り、摘果、下刈りなどで年に数回定期的に訪問することでコミュニケーションが取れる。柿の木オーナー制度にして、定期的に柿の管理、空き家管理とか、田舎の地域課題解決にもつながりそうですね。

 

秋田に適した事業だと思っています。人口減少が加速して、このような取り組みが前例になって様々な形で転用できると、全国の先進事例になっていきます。柿の木から様々な発想できて面白いです。

私が集落に乾燥機を運んで、みんなで収穫した柿をドライフルーツ加工して地域で販売し、収益は集落に、私は日当だけいただいてという活動もできればいいです。

目標がどれだけ達成できたか

当初の目標は秋田県の「若者チャレンジ応援事業」に採択・評価されることでしたが目標以上の成果を上げました。メディアで取り組みを取り上げていただき沢山の方々に知っていただき目標を上回っています。

この先取り組みたい夢

まずは私自身が生活できるようになりたいです。そのために柿ソースを使用したキッチンカー事業で収益を出せるようにしたいです。後々は大きいバスをキッチンカーにして、中でお好み焼きを食べて、柿ビールやワインを提供し、柿の加工品を一緒に販売できればいい。秋になったら柿を収穫して、柿を軸にしたビジネスを軌道に乗せたいです。

取り組みはフードロスの削減にもつながっています。処理しきれない柿は、いろんなお店で柿を材料に使えないか、スイーツやカレーなどに入れてムーブメントを起こせないか“柿まぜる”プロジェクトに挑戦してみたいです。

そして、柿に限らず余って廃棄されそうな野菜・果物で加工販売する事例を作ってみたいです。もったいないものをうまく使って、「畑がない農家」として柿の次につながる事例を作りたいです。

能代山本地域の皆さんに向けてメッセージ

放置柿の背景には「収穫出来ない」の他に「お願いできない」というのがあると考えています。地域特有のものだと思いますが、遠慮して他人に迷惑をかけたくないと。手を取り合って持ちつ持たれつでいいと思います。柿に限らず自分で出来ない事はまず誰かに聞いてお願いし、断られたら違う人に聞いていけばいずれ答えに辿り着くと思います。

「えふりこき」にならずもっと周りに頼っていくべきです。柿が取れないなら誰かに取ってもらおうの気持ちで私に頼んでください。

畑がない農家 代表 柿木崇志さん

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