大いなる水循環を体感する沢歩き
ブナの森は保水力に秀でていることが知られています。
森に降る雨を1枚1枚の葉で受けとめて、枝から幹を伝わり地中へ。
スポンジのような腐葉土で大量の水を貯え、浄化されてミネラルをたっぷり含んだ水は、地上に溢れ出て流れを作ります。
清冽な水は小さな沢となり、無数の沢を集めてやがて大河になり海へと下っていきます。
海の水は太陽に温められて蒸発し、上空の冷えた空気で雲になり、雲は風に流されて陸地に雨を降らせます。
森に降った雨は・・・。
川の源流では、ときに荒々しく白泡をたてて大岩の間を落ち、ところどころに青緑色の深い淵を形作り、穏やかな浅瀬となってサラサラと流れていきます。
その水はあくまでも透明で、陽の光に輝き、新緑の頃はエゾハルゼミや小鳥の鳴き声が空から降り注いでくる、都会とはまったく別の世界、一般的なトレッキングとは異なる自然にどっぷりと浸ることができる数時間を楽しむことができます。
白神山地の自然をワイルドに楽しむアクティビティ、「沢歩き」がどんな様子なのか、ちょっとだけ画像でバーチャルトリップをしてみましょう。
ここは一般的な登山やトレッキングの経験のある健康な方なら、小学生から楽しむことができる、さほど奥深くない沢です。
沢に入る前、靴に荒縄を巻いて滑り止めに。山の人の昔からの知恵です。
はじめの一歩は水の冷たさに声が上がるけど、すぐに慣れてきてジャブジャブと流れの中を歩いていきます。
浮いている石があったりするので、そこは手探りならぬ足探り。まだ5分も歩いていないのに、右に左にくねる流れのその先にどんな世界が待っているのかワクワクしてきました。
穏やかなエメラルド色の瀞がありました。
泳ぎたくなるのをグッとこらえて岸辺を巻いていきます。
なぜなら・・・、ここにはイワナが悠然と泳いでいたから。
白神山地の沢には源流の主と言われるイワナや渓流の女王・ヤマメといった、渓流の魚がたくさんいます。
渓流釣りの人にも憧れの沢なのですが、今回は釣りが目的ではないので、岸からしばし静かにイワナの泳ぎを眺めていました。
ちょっと水の中をのぞいてみましょうか。
わかるかな~~~?
ほら、ここに!
浅瀬を選び、時には大きな岩を越えて上流をめざして進みます。
多少の登山の経験があれば、沢歩きが初めてでもすぐに不安気な顔は笑顔にかわっていくでしょう。
浮石に注意してストックでバランスをとりながらどんどん上流をめざします。
そろそろおなかがすいてきました・・・。
お楽しみは現地で作る「山ゴハン」、今日のメニューは秋田名物きりたんぽ鍋です。
登山ガイドでもある「山シェフ」が作る「山ゴハン」はいつも本格的!
ザックの中に入っていた食材で、料亭並みの美味しいきりたんぽ鍋ができました。
おやつも食べたし、おなかもいっぱい。
昼寝がしたくなるような大きな岩の上でくつろいだら、沢歩きプログラムも終了です。
並行している林道に上がって、15分も歩けばスタート地点に帰着。
2時間も沢の中を歩いてきてすごい冒険をしたような気になっていたけど、距離はわずか1kmくらいだったんですね。
白神山地の清冽な水の旅。
森と水の関係や、そこで暮らす生き物、それらの恩恵を受けている私たちの関係がとてもよく実感できる、非日常の体験となりました。
沢歩きは、慣れている人なら特段の危険はありませんが、地元のガイドさんと一緒に歩くと、安全管理はもちろん様々な白神のお話しを聞けるし、いろんな楽しみ方を教えてくれるのでオススメです。
沢歩きのガイド依頼やお問い合わせは下記までどうぞ。
インフォメーション
- お問い合わせ先
- ◇秋田白神ガイド協会(藤里町)
電話0185(79)2518 Mail: shirakami-kankou@bz03.plala.or.jp
◇(一社)白神コミュニケーションズ(能代市)
電話0185(88)8220 Mail:info@shirakamicc.com
後藤 千春
白神山麓をベースに北海道から北アルプスまで、四季を通じて登山・自然ガイドを行っている。また、残しておきたい日本の原風景を中心としたネイチャーフォトも積極的に撮っており、エッセイや記録文の寄稿も多数。 近年は登山・自然ガイドの後進の育成にも力を入れ、研修や検定、講習や講演で全国各地へ出向くことが多い。【(公社)日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド、 (一社)全国森林レクリェーション協会森林インストラクター 、 秋田県知事認定白神ガイド(養成指導者)、 全国体験活動指導者認定委員会自然体験活動部会上級指導者、 一般社団法人白神コミュニケーションズ 代表理事】