都会の疲れを癒す白神の森
毎朝のお目覚めはいかがですか?
昨日の仕事の疲れは残っていませんか?
満員電車に揺られ、時間や締切に追われる毎日にストレスが溜まっていませんか?
今度の週末はどこへ出かけますか?
いきなり現実的な言葉を並べたててスミマセン・・・。
白神山地にブナが発生してから8千年と言われています。
道路やダム建設などといった開発の手が入らぬまま、原生的な姿のままで8千年の森。
東アジア最大級のブナの原生林が残っているのが白神山地世界自然遺産登録地域で、その面積は約1万7千ヘクタール(東京山手線の内側の面積2.7個分)です。
秋田県側の世界遺産地域(核心地域)には特別な許可がないと入林できないことになっているのですが、そんな貴重な森っていったいどんな世界が広がっているの?
ということで、誰もが気軽に入れる森として遊歩道が整備されている、けれども深山幽谷の雰囲気を存分に味わうことのできる森があるのです。
秋田県藤里町の「岳岱(だけだい)自然観察教育林」。
気軽に?
そう、秋田青森県境近くまで山奥に分け入るのですが、羽田空港から大館能代空港まで1時間、そこからクルマで90分、乗り継ぎなどを入れても約3時間で大都会から深山幽谷の空気を吸うことができるのです。
もしかしたら往復の通勤時間が3時間、なんていう方もいらっしゃるのでは?
では、5月中旬、新緑の岳岱の森へ出かけてみましょう。
世界遺産センター藤里館から全線舗装の道を、藤琴川の清流に沿って上流へと進んでいきます。
すぐに右手に雪融けの水を集めて落ちる「峨瑯(がろう)の滝」。
黒い岩盤を白く流れる様に新緑が映えます。
「白神山水」の水工場から先は1車線になるのでスピードとすれ違いには充分注意。携帯電話も通信圏外になります。
どんどん車を進めると道ばたにひっそりと立っている道標、「これより白神山地」に期待感も膨らんできます。
太良鉱山跡の橋から先は「太良峡」とよばれる渓谷美。
天然秋田杉と広葉樹の新緑のコントラストも綺麗です。
かつて走っていた森林鉄道の鉄橋も見えました。
岳岱の森へ入ると最初に出迎えてくれる樹がこれ。
大きな岩の上にしっかりと根を張って、まるで岩をつかんでいるかのよう。
さてさて、どうやってこんなに大きく育つことができたのでしょう?
で、足元に目をやると、あら~~~! 生まれたばかりのブナの赤ちゃんが。
生まれたてで殻を被ったままの子や、本葉も出してセミの脱皮のお手伝いをした子まで。
ユキザサやオオカメノキの白さも森の中ではひときわ目立ち、そして見上げれば陽光がキラキラまたたいてグリーンシャワー、緑の空気を思いっきり深呼吸したくなりますね。
森の中はエゾハルゼミの大合唱、まるで音のシャワーのように降り注いできます。
数年間、じっと暗い土の中で過ごしてきた幼虫が、陽光まぶしい地上に出てくると、すぐに木に登っていきます。
そして脱皮、羽がしっかりするまではまだ飛ぶことができません。
池の中にはサンショウウオの卵がありました。
ここはモリアオガエルの棲む池でもあります。
初夏の森は、植物も昆虫も鳥にとっても新しい生命が生まれ、育ち始める、ここは命の森なのです。
森の奥へ進んで行くと、がっしりとした
根を張るブナが立っていました。
「威風堂々」という言葉がピッタリです。
圧巻は400年ブナ。
ブナの寿命はおおよそ250年~300年
くらいと言われていますが、それをはるか
に越える400年!
今から400年前というとこの国は・・・。
関ケ原の戦ののちに徳川幕府が誕生した
頃でしょうか。
津軽の殿さまが参勤交代で羽州街道を
歩いていた時代も知っている老木なんですね。
白神山地で誰もが目にすることのできる
ブナの中では一番の長老かもしれません。
白神山地らしい原生的なブナ林「岳岱の森」。
サクッと回れば1時間ほど、ゆったりじっくり森時間を過ごすなら3時間くらいかけて、いろんな発見や感動を見つけ出してみてはいかがでしょうか。
一部の歩道はバリアフリー対応で車いすでも散策できます。
森の奥へと続く道は、木道や階段も整備された歩きやすい登山道です。
一番奥にはブナ林の地中から初めてこの世に出てきた、生まれたての水が飲める
湧水ポイントがあります。
白神山地の超軟水、とってもまろやかでピュアなミネラルウォーターを汲むことができるので、空の水筒もお忘れなく。
都会の疲れや溜まったストレスが一気に解放されていく清々しさを、一人でも多くの人に味わってもらいたい、そんな爽やかなブナの森がここにあります。
岳岱の森のガイド依頼やお問い合わせは下記までどうぞ。
インフォメーション
- お問い合わせ先
- ◇秋田白神ガイド協会(藤里町)
電話0185(79)2518 Mail:shirakami-kankou@bz03.plala.or.jp
◇(一社)白神コミュニケーションズ(能代市)
電話0185(88)8220 Mail:info@shirakamicc.com
後藤 千春
白神山麓をベースに北海道から北アルプスまで、四季を通じて登山・自然ガイドを行っている。また、残しておきたい日本の原風景を中心としたネイチャーフォトも積極的に撮っており、エッセイや記録文の寄稿も多数。 近年は登山・自然ガイドの後進の育成にも力を入れ、研修や検定、講習や講演で全国各地へ出向くことが多い。【(公社)日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド、 (一社)全国森林レクリェーション協会森林インストラクター 、 秋田県知事認定白神ガイド(養成指導者)、 全国体験活動指導者認定委員会自然体験活動部会上級指導者、 一般社団法人白神コミュニケーションズ 代表理事】