海の幸、山の恵み ~八峰町・御所の台キャンプ場~
「森閑(しんかん)」、「深閑(しんかん)」。
どちらも「ひっそりと静まり返っている様」を言い表す単語ですが、漢字のイメージとしては「深い森の中にいるような静けさ」といった感じではないでしょうか。
ここは八峰町の白瀑(しらたき)神社。朝の光を森が遮り、耳をすませば鳥の声と滝の落ちる音。とはいえ、集落を走る国道からクルマで2分、JR五能線東八森駅から歩いても15分と、決して人里離れた山の中ではありません。
今回はアメリカ人ALT(外国語指導助手)の皆さんと、白瀑神社~留山のブナ林~八森漁港の観光市~八峰白神ジオパークを巡った後、友人と二人で御所の台キャンプ場に泊まるという、白神の海の幸と山の恵みを堪能するプランです。
ということで、ガイドさんと一緒にまずは白瀑神社へ参詣。
参道の歩き方、手水の作法、二礼二拍手一礼などなど、神社お参りのやり方を含めた日本文化に触れてから、本殿裏に流れ落ちる白瀑を見に行きました。
滝のミストを全身に浴びると、気温も2度くらい低くなったような清涼さを感じます。
ここは毎年8月1日、白装束の男衆が町内を練り歩いてから、白瀑の滝つぼに神輿ごと入りこんで、五穀豊穣・海上安全・商売繁盛などを祈願するという、全国でもここだけの「みこしの滝浴び」という祭があります。
白瀑神社から林道を走ること20分、薬師山の裏手に広がるブナの森「留山」へやってきました。
藩政時代から地域の人たちが水源確保のために伐採することを「留めおく山」として大切に守られてきたブナの森は、白神山地の原生林を彷彿とさせる豊かな自然の中に周回できる遊歩道が整備され、特に山登りの用意をしていなくても楽しめます。
ただ、ここは地域の大切な森なので、立ち入るためにはガイド同伴が求められています。
それだけではなく、やっぱり地元のガイドさんの案内でさまざまな森のことや地域のことなどを含め、白神の話を聞きながら歩くことで、世界自然遺産・白神山地への理解が深まるというものです。
さっき降った雨で巨木の森の中はしっとりと潤っていました。
ゆっくりと写真を撮り、ガイドさんの話を聞き、いろいろな質問や疑問にも答えてもらいながら歩くこと2時間半(通常は1時間~1.5時間で周回できます)、充分に白神のブナ林を堪能できました。
さてさて、おなかもすいてきたのでランチは土日限定開店の「はちもり観光市」へ。
なにが楽しみかって、ここにはセルフ炉端焼きコーナーがあるんです。
品選びと値段のやり取り、お店の人との会話も楽しいですね。
各店舗を眺めて美味しそうな魚介類とおにぎりを買って、いざ炉端へ。
巻貝の身を出すのは、「ほら、こうやって箸を刺したらくるんと回して・・・」とガイドさん。
二枚貝は慣れているけど巻貝はあまり身近ではないという3人も、要領がわかれば簡単カンタン。
ほらほら、大きなホッケもアジも美味しそうに焼けてきましたよ~。
食後はジオパークの海岸へ。
江戸時代後期の紀行家で博物学者の菅江真澄も立ち寄り、ハタハタ漁の見学なども行って「雪の道奥雪の出羽路」に記されているのが、小入川河口の砂浜にすっくと立っている立岩です。
裏側(表側?)に回って耳を澄ませてみると、あれ?岩の中から波の音が聞こえる・・・。
ほら、やっぱり聞こえる。
まるで岩の中に海があるみたい?????
実はこれ、凹状になっている岩の表面に波の音が反射しているんですね。
青い鉄橋に五能線の列車が来ればいいのにな~、と思いながら、童心に還って砂浜で貝がら拾いを始めたら、みんなついつい夢中になってしまいましたよ。
日本一小さなジオパーク(「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」とを組み合わせた言葉で、「大地の公園」を意味し、地球(ジオ)を学び、丸ごと楽しむことができる場所 引用:日本ジオパークネットワーク)で貝がら集め・・・、これもまた楽しいかな。
白神山地は海が隆起して出来た山、その証拠に海岸に転がっている石と同じ種類の石が山奥の世界遺産地域の沢にもたくさんあるんだとか。
その石に腰かけると偉くなるらしい・・・?
社長席。いやいや、冗談、斜長石という白くて平べったい消しゴムのような大きい結晶が散りばめられている石のことです。
英語では通じないジョークですね。(^^;
御所の台オートキャンプ場は、JR五能線「あきた白神駅」と連絡通路で直結している温泉施設「ハタハタ館」を中心として、主に自然体験活動で利用される「あきた白神体験センター」、地元産の食材が豊富な「産直ぶりこ」といった一連の敷地に隣接しており、車利用のオートキャンプをメインに松林の中のフリーサイトなど、多様なキャンプニーズに応えてくれる、整備されたキャンプ場です。
まずは晩ごはんの買い物に、「産直ぶりこ」へ。
海の幸山の幸はもちろん、すぐに食べられるお惣菜やお弁当、デザートから酒のツマミまで、当地ならではの珍しいものもいろいろ揃っていて目移りしてしまいます。
ハタハタ館の温泉は寝る前に入ることにして、ちょっと下見。
お土産物もたくさんだし、レストランのメニューにも興味津々。
さて~、キャンプ場のチェックインを済ませてテント張り。
今回は一人一張のソロテントです。
海を見下ろす松林の中のフリーサイトは、波の音が子守歌になりそう。
水平線を眺めてみると、左手に能代の街からぐ~っと湾曲して、遠くに島のような男鹿半島の本山や寒風山が見渡せます。
独りで自由な午後の時間を楽しめそうなシチュエーションですね。
でもやっぱり友達と隣同士がいいので、クルマも置ける個別サイトに張り直し。
隣同士の区画で片やドームテント、こちらは簡易テントでそれぞれ一夜を過ごします。
周囲のテントはファミリーが多めで、豪勢なBBQの匂いが漂ってきます。
この家族のテントは豪華で楽しそうですね。
さすがクルマで入れるオートキャンプ場、何でも持ち込めそうです。
こちらは、二人でささやかに乾杯の後は、日本海に沈む夕陽を眺めながらゆったりと。
今日の太陽が沈み、明日の晴天を告げる夕焼け雲が流れていきます。
明日もたくさん白神の海と山と沢と森で楽しむことにして、残照消えゆく水平線に灯る漁火と、姿を見せ始めた北斗七星を眺めながら今日一日の終わりを感じましょうか。
あ! 寝る前に温泉に行かなくちゃ・・・。
皆さんも「Have a nice trip! Bye (@^^)/~~~」
後藤 千春
白神山麓をベースに北海道から北アルプスまで、四季を通じて登山・自然ガイドを行っている。また、残しておきたい日本の原風景を中心としたネイチャーフォトも積極的に撮っており、エッセイや記録文の寄稿も多数。 近年は登山・自然ガイドの後進の育成にも力を入れ、研修や検定、講習や講演で全国各地へ出向くことが多い。【(公社)日本山岳ガイド協会認定 登山ガイド、 (一社)全国森林レクリェーション協会森林インストラクター 、 秋田県知事認定白神ガイド(養成指導者)、 全国体験活動指導者認定委員会自然体験活動部会上級指導者、 一般社団法人白神コミュニケーションズ 代表理事】